2008年の9月から、岩手県盛岡市にある児童養護施設「みちのくみどり学園」で記録映画の撮影が行なわれました。
同じ岩手県の西和賀町を舞台にした『いのちの作法 沢内「生命行政」を継ぐ者たち』の監督・小池征人監督が、児童養護施設の日常を通して、現在の子どもたちを取り囲む現状を照らし出したいという想いで、映画『葦牙-あしかび- こどもが拓く未来』の撮影を行なったのです。
4ヶ月の撮影期間とその後の編集作業を越えて、7月11日(日)・岩手教育会館でその完成披露上映会が開催されました。
7月の上映会に先立って、盛岡市では実行委員会を立ち上げるべく、都鳥拓也、都鳥伸也プロデューサーが盛岡市内を奔走。事務局を引き受けて下さった「NPO参画プランニングいわて」の皆さんとともに活動しました。
たくさんの意見やアイデアの中から、実行委員長には盛岡市在住の作家・斎藤純さんにお願いすることになりました。
斎藤さんは快く、実行委員長を引き受けてくださり、上映実行委員会は動き出しました。
とは言え、実は『葦牙-あしかび-』は実行委員会結成時はまだ、その存在が公にはされていませんでした。
というのも、現在、児童養護施設に入所している子どもたちの多くが、親や周囲の人たちから「虐待」を受けているという現状があり、プライバシーの問題が難しく、みどり学園と映画スタッフは「発表は映画が完成して、しかるべきタイミングで行なう」と約束していたからです。
本来ならば、製作開始段階で発表し、そのあとにクランクイン、クランクアップと報道してもらったりして映画を盛り上げていくのですが、その仕掛けが出来ません。
完成発表の記者会見が『葦牙-あしかび-』の存在を公にする最初のタイミングだったのです。
盛岡の上映実行委員会はその記者発表の前に結成されたのでした。 記者発表は6月8日。上映のほぼ一月前。こうした自主上映では、最低、PRには3ヶ月は必要だと言われています。 しかし、一月しか時間が無い。これは、映画を成功させようと願う実行委員たちにとっては、大きな悩みでした。 撮影段階から大きなPRが行なわれているわけではないこの映画を多くの方に伝えて、会場に足を運んでいただくためには、一人ひとりが映画の本質、子どもたちを取り囲む現状を理解して訴えかけていくしかありません。
記者発表と同日、実行委員に向けての試写も行ないました。
そこで、一人ひとりが何を感じ、何を観客に訴えるのか? 非常に重要な意味を持つ時間でした。
こうして向かえた完成披露上映会当日。 小池監督や撮影の一之瀬正史さん、製作総指揮の邦夫さん、都鳥プロデューサーも参加し、朝8時過ぎには実行委員が会場に集まります。
事務局長を中心に円陣を組み、意思統一。
学生ボランティアやみどり学園の職員たちも含めた大勢の人達が、最後の準備に取り掛かりました。
準備中、会場にはまだ1時間近くも前だというのにお客様の姿が見えます。
徐々にその数は増え、開場を時間よりも早めて、お客様を中に入れます。
定員700名がほとんど、ぎっしりに埋まったころ。
ドンッ! ドンッ! という大きく勇壮な音で上映会は幕を開けました。
映画の中にも登場する、みどり学園の子どもたちによる、野岳太皷の演奏でスタートです。
この太皷の演奏は映画の初日である、この日に子どもたちから集まった皆様へのプレゼントとして企画されました。
チラシやポスター、新聞などでもこのことは秘密にされ、当日のサプライズとして行なわれたため、驚いた方も多かったのではないでしょうか?
地響きのような迫力の演奏に続いて、実行委員長の斎藤純さんによる挨拶。
「本当はこのような映画が作られないことが一番いい。でも、今の社会の現状はそれを必要としてしまっている。この映画に出てくる子どもたちの姿はまるで大人に、“しっかりしろよ”と言っているようです」
というメッセージに続き、次は映画の製作スタッフの紹介と監督による挨拶。
小池監督は、まず映画の撮影に協力してくださった、みどり学園の皆さんに感謝を述べ、そして会場に集まってくださった方々に感謝を述べました。
「子どもたちの背負っている大きな荷物を知り、撮影をしながら、子どもたちを愛おしく感じました。この映画が子どもたちの一つの応援団になれたらと思います」
という監督のメッセージ。
そして、いよいよ上映が始まります。
この日、午前中の上映と午後の上映をあわせ、1,100名の方々がこの会場に集まって下さいました。遠くは青森県や宮城県、岩手県内でも沿岸の宮古市など本当にいろんな地域の方がいました。
観賞したあとの感想には、様々な形があり、一人ひとりの生活状況や家庭環境によっていろんなことを感じて頂けたのかな、という印象があります。
アンケートを熱心に書いてくれる方、監督や学園の職員の方に語りかける人、想いを見せる形もそれぞれです。
映画『葦牙-あしかび- こどもが拓く未来』の第一歩が始まりました。
これから完成披露上映会として、岩手県内では一関市、北上市で上映会が開催されます。
そして、8月後半からは県内巡回上映がスタート。
また、11月には東京や大阪、名古屋での劇場公開も計画しています。
その一歩をこうした形で走り出せたことをうれしく思います。
「盛岡完成披露上映会」感想
【30代女性】 重くて難しいテーマで、身近におきているだろうことなのに見ないふりをしてきている。さけたいテーマなのに、事実をありのまま伝えていてとても訴えるものがありました。子どもたちが傷つきながらも強く希望をもって生きている姿に感動しました。自分にできることは何だろうかと考えるきっかけになりました。
【40代女性】 大人のみならず同年代の子どもにも見せたい。生きていくことの苦しさを幼少期から経験してしまった子どもたち。強く生きていって欲しいです。
【30代女性】 実際の一部ではあると思うが事実をありのままにとり入れたことで反論もあるかもしれないが、私にはこれからの子ども達の未来を考えてく上で必要な事だと思った。子ども達も多感期にも関わらず撮影されることをよく理解してくれたな~と思ったが、だからこそ社会に伝えたい事の方が強かったんだな~と思った。反抗してる時期も照れてる時も楽しんでる時も心が複雑な時も子ども達みんないい顔をしていたのが印象的だった。
【60代男性】 見て良かった。ずうーっと上映中涙があふれてとまりませんでした。ひたむきな子供達。なぜ親は虐待するのか。こんなにもかわいい我が子。私にも二人の子がいます。自問します。いい映画でした。
【70代女性】 はじめの太皷の音が心とおなかにずし~んと響いたとたん、涙腺がぷつんと切れ、涙がとめどもなく流れました。そのあと心に深い傷を抱えたこどもたちが必死にいきてる姿と、それに真剣に立ち向かいながら接している指導員の方、スタッフに頭が下がる思いでした。私ももう少し自分の目と心を傾けて、こんなに悲しい思いをする子どもたちがでないよう努力していかなければいけないと感じました。
【20代女性】 ありのままの学園の様子、子どもの心の葛藤が描かれていて、とても感銘を受けました。また親が出ていることで親は子どもをどう思い、子どもの目からは親をどう思っているのかが伝わってきて考えさせられました。虐待の現実を本当によく伝えていると思いましたし、子どもに職員がどうかかわっているかをもっと見たかったとも思いました。
【70代女性】 すばらしい太皷の音で始まった。後に大工さんの吉田さんが子ども達と一緒に作った太皷だとわかり感動。この様な子ども達を育てている施設に県からも予算を沢山いっているだろうか、施設の方々に頭がさがる思いです。
【10代女性】 家族と一緒に生活できないことへの不安や怒りなど様々な感情が入り混じっている中で、自分自身と向き合っている子供達に心を打たれました。自分達が家族と当たり前のように生活できていることはとても幸せなことで決して当たり前の事とは思ってはいけないと感じました。
【10代女性】 この映画をみて、私は幸せなんだなあと思いました。そして、家族の重さ、大切さを改めて知ることができました。子供が親を好きでもその気持ちがうまく伝える事ができなかったり、親がしつけと思ってやってることでも暴力になったり、家族や親子というのはとても難しいと思いました。私も家族や親に対してもって自分を出して、もっと知ってもらおうと思った。
※このほか、多数の感想を頂きました。ご来場頂きました、皆様。本当にありがとうございました。






